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ビットコインがダメな理由は、おおよそ4種類の問題に集約される #ビットコインキャッシュ #ダッシュ #ライトコイン

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2009年1月に生まれたビットコインは、ビジネス側ではなくあくまでテクノロジー側から生まれた技術なので、実用性が得られるまでには時間を必要とします。12年経った現在も、人々の生活の通貨としては扱われておらず、マニアのトレードの道具のような扱いになりがちです。

では、12年間もの間、何も手を打たなかったのかというと、そういうわけではありません。現在、かなりの種類の暗号通貨が市場に出回っており、当然ですがこれらは実用されることを目的に作られたものもあるわけです。その中でも、ビットコイン本来の「通貨として利用」を実現するために、ビットコイン誕生以来さまざまなアプローチが試みられました。いくつか紹介しましょう。

ライトコイン: 発行枚数の少なさ・送金スピードを改善する

2011年10月と、ビットコインの誕生後3年弱を経て生まれたコインです。ビットコインの上限は2,100万枚なのですが、普及が進む中で「総量が少ない」と、そういう課題意識を持つ人がでてきたんですね。ライトコインは、ビットコインが「金」だとすると、ライトコインは「銀」だ、という位置づけで作られました。

これはどういうことかといいますと、昔の通貨は、本物の「金」と「銀」でできているものが出回っていて、それでモノと交換する形で売買取引を行っていたんですね。一般的に、金よりも銀の方が多くとれるので、銀貨を何枚で金貨を1枚相当、みたいなことをして金よりも小さな単位で扱える便利なコインの銀貨を作っていました。

日本は江戸時代、銀貨4枚で金貨1枚と交換できたそうですが、世界では銀貨12枚相当で金貨1枚に交換するのが一般的だったそうです。それで幕末の日本は、海外から銀を売られて金で支払うみたいなビジネスが流行ってしまって、とんでもない量の金を失ったそうですね。相場の1/3とかで手に入るわけですから、海外はボロ儲けです。

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現在においても、金1に対して銀4-5というのが一般的な相場です。ビットコインという金貨は単位が大きすぎて扱いにくいから、ライトコインという銀貨で4分割された単位で扱えるようにしたい。このため、ライトコインビットコインの2,100万枚に対して、8,400万枚まで世の中に存在できるような仕掛けにしました。ところが2021年3月現在、ライトコインは$205/枚に対して、ビットコインは$56,800/枚と約280倍の差がついており、本来の目的は何も達成されていないとい状況です。

幕末に金銀は、市場に出回っている金銀の総量によって価値が決まっていました。日本の方が金が多めにとれたから、銀に対して金の相場が安くなったんですね。しかし近代社会はそんな簡単なものではありません。暗号通貨の相場は、貨幣の総量でなく市場原理によって決定されることがライトコインの存在で証明されることになります。どれだけその暗号通貨を人々が欲しているのか、それが相場を決めるということです。のちにこの問題は、別のアプローチで改善しようと試みる暗号通貨が出現することになります。

加えて、ライトコインは黎明期の当時にもう一点多きな課題に着手しました。それは「送金スピード」の問題です。

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ライトコインは、平均してビットコインの1/4程度に収まるようパフォーマンスを改善しています。しかし、ビットコインは現在10分を越えており、ライトコインも2.5分以上かかるということで、現在においては通貨の重要機能と言える「リアルタイム支払」でライトコインを扱うことは難しいという状況です。

今でも人気があるライトコインですが、私は2011年に「相場の混乱」「送金スピード」の2つの問題に取り組んだことは、非常に価値あることだと思っています。この2つの問題は、2021年現在においもて、新たな暗号通貨作りに取り組むモチベーションの一つになっています。

ダッシュ: 送金スピード・堅牢性を改善する

ライトコインがでてきて約3年後、2014年3月にダッシュというコインがでてきました。これは名前の通り、スピードを売りにしたコインです。送金処理は約4秒程度。クレカやQRコード決済とほとんど同じような速度で、リアルタイム支払用途でも十分に実用性と言えるでしょう。

ダッシュはスピードのみでなく、堅牢性にも注目しています。ビットコインは、お金がどこからどこに渡ったのかという記録が、オープンにやりとりされますから、世界中の誰もがその記録を観ることができます。クレカの利用明細を全世界に晒すような状態なわけですから、これでは現金のような気軽な支払なんてできません。ダッシュは、ここが匿名で扱われる、つまり周りにバレないような仕掛けにしました。

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現代のほとんどの国は、金融システム上の誰が誰にお金が渡ったのか把握し、そこから税金をとるという仕組みによって回っています。モノを売買したなら消費税になるし、労働の対価なら所得税になるし、対価が無いただの送金なら贈与税が必要になります。誰から誰へお金が渡ったのかを把握できなくなったら、税金から不正に逃れようとする「マネーロンダリング」という犯罪の温床になるわけです。

ダッシュもまた、やはりマネーロンダリングの温床になっているんじゃないかと問題視されたりもしました。

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薬物や拳銃の売買みたいな、犯罪にも使うことができるでしょう。匿名での金銭のやりとりができるわけですから、誰にも売買の内容を監督されないし、悪用してもバレないというメリットがあります。

ある程度はプライバシーが守られている上でお金の受け渡しをしたいというニーズはあり、特に現金でのモノの売買は消費税こそとられますが、具体的に誰との間での商取引によって生じたのかまでは記録されません。デジタルの世界だと、プリペイドカードが同じ役割を担っていることがあります。

このように、現実社会のニーズとバランスを捉えた「匿名性・プライバシー」の問題は、新たな暗号通貨作りに取り組むモチベーションの一つになっています。

ビットコインキャッシュ: ビットコインの理念を貫きつつ実用性を追う

ダッシュからさらに約3年後、2017年8月に誕生した暗号通貨です。

ダッシュの時もそうですが、ビットコインは送金の処理が相当遅く、現金代わりとして扱うことはありえないという状況。ビットコインの考案者であるサトシ・ナカモト氏の理念であった「通貨として使いたい」という想いは、技術的には不可能な状況に陥ってました。投機のためのツールでしか機能しなくなったのです。

そこで、彼の理念を継承し、ソフトウェアとしての性質をきっちりと継承しつつ、それでいてサトシ・ナカモト氏の理念をなんとか達成しようという目標で、ビットコインキャッシュというのが生まれました。ビットコインキャッシュは、本家のビットコインを差し置いて「俺がビットコインだ」「こっちが本物のビットコインになるべきでは」なんてことを、開発者のコミュニティの中で言われるほど、やや過激派にも感じられるような強い哲学を持ったコインです。

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ビットコインキャッシュは、他の暗号通貨に比べると特徴は少なく、強いて言うなら「手数料が安い」ことが挙げられます。

暗号通貨は、誰かから誰かに送金する際の手数料によって、インフラ提供者の運営コストが支えられているという状況なわけですが、ビットコインは2021年3月現在は約2,500円(0.0004BTC)と、手数料が高すぎて全然実用的じゃなかったりします。一方で、ダッシュは約0.25円程度、これはこれで安すぎてどうなんだろうという気になります。

ビットコインキャッシュは約11円程度で、一番バランスがとれているようにみえますね。ただ、結局のところ一回の送金あたり0.0002 BCH固定ですので、相場が上がれば手数料も上がることに変わりありません。しかしこの時期は手数料の高止まりが問題視されていた時期ではありますので、手数料値下げを売りするのはとても大切な取り組みでした。

そして「手数料が安い」という問題に挑んだことは、現在もなお新たな暗号通貨作りに取り組むモチベーションの一つになっています。